敬愛する山田尚子監督の傑作。
女子高生たちの可愛らしさを盛り立てる素敵な音楽を担当されたのは牛尾さん。
今更ではあるが、観れてよかった。
桐島、スキップとローファーに続いてまた高校生のお話。意図せず青春に塗れている。
まずは、正直な感想。
胸が苦しくなる映画だった。高校時代という人間的に未熟で自分自身のことでいっぱいいっぱいになりがちな時
大きな事件が起こるわけじゃないし、怒鳴り合いの喧嘩をするわけでもない。でも高校生活の日常に潜む歪み、普段は目配せ程度でしか表出しない歪み、たぶん女子社会に多い神経質な歪みがアニメーションならではの手法で表現されていて、精神に響く。淡く可愛らしい色使い・繊細な表情と、映像の意味するシビアな現実が、相乗効果で恐ろしいパワーをもって心を抉りにくる。
これらは誉め言葉である。美しい絵と音楽、そして「
この作品で一番印象的だったのは、のぞみが持っているフルートに反射した光が、向かい合う別棟にいるみぞれの上でゆらゆら
水槽を通して入ってきた光の、
また、
ふぐの水槽の前で目を閉じて束の間の休息をとるみぞれが、
この作品は言葉での説明がなくとも登場人物たちの性格が把握できるように作られているのがすごい。
みぞれの反応がワンテンポ遅くて会話についていくのが難しいとこ
このふたりは仲良がいいはずなのだが、親友的な関係が長くは続かないという予感が序盤から漂っている。絶対に分かり合えないところが最初からあって、それを無視していままでなんとか続いてきただけの関係なので、いずれその問題を解決するためにぶつかるか、問題はそのままに袂を別つか、決めなければいけない時がくるのだ。
部長さんと茶髪の子(名前が分からない)はこの二人の危うさを察知している。部長さんからは、彼女たちの様子を見つつも必要そうなところでははっきりと意見を言える気の強さ、正義感みたいなものが伺える。茶髪の子はみぞれとのぞみ両方の都合に配慮して、さりげなくフォローする姿が印象的。
あと、みぞれの後輩ちゃんたちが非常に可愛い。何を食べたらこんなに可愛く育つんだろう。この子たちみたいな後輩いたら可愛くてしょうがないだろうなあ。
突然ですが、ここから先は超個人的かつ主観的な感想になるので、作品から受けた美しい感覚を損ないたくない方は読み進めないことをお勧めします。
先に、以下の感想は作品批判では全くないことを念のため、本当に念のため断っておく。
綺麗で面白いものだけじゃなくて、人生の苦労も合わない人との関係も思い通りにならないアレコレも鑑賞者の心に届けようとするのが映画なので、登場人物に好きじゃないタイプの人間がいたとしてもその「好きじゃない」感情は作品本体とは関係ない。これは映画に限ったことではないが。私が物申したいのはフィクション作品のキャラクターの振る舞いについてであって、「もしこんな人が同級生にいたら」という空想がベースになっていることをここに書いておく。
のぞみがかなり嫌なやつに見えてしまったのは私だけだろうか。私にはこのストーリーが「無神経な人間に内気な人が蹂躙される」という構図に思えてしまった。のぞみの身勝手な行動と妬みに振り回されて疲弊するみぞれが不
また、「みぞれがリズで、私(のぞみ)が青い鳥」だと思っていたというのも、みぞれからの強い愛情や部活社会における立ち位置などの状況を把握したうえでみぞれに「捕まってあげていた」みたいな思考があるような気がして怖い。最終的には自分のみぞれに対する嫉妬心を告白するし、これは勘繰りすぎかもしれないけども。
のぞみは悪気があってやっているわけではないし、
まあただ、色んな人と分け隔てなく仲良くしていきたいのにノリが合うわけでもない人からこの先も一生続きそうな依存をされるのは面
だが私個人はみぞれと近い感覚の持ち主なので、
みぞれの片思いが成就することも、大学進学後もこれまでと同じような距離感で仲良していくこともないだろう。でも、きっとみぞれはどんな想いも自分の好きな音楽を豊かにするための材料にしていける。そう思わせてくれるラストだった。