三四郎_読書感想文の前書き

三四郎の再読に取り掛かっている。

今回の読書は、この作品が漱石小説群の中で最もお気に入りであると公言するためにその明確な理由を獲得し、この作品の味を他者に伝え得る程深く理解することを目的としている。

 

私がこの作品を気に入っている理由は、実はこの作品がとても理解しやすいものだからなのではないかという疑念が先日起こった。

中学・高校の教科書で扱われる作品。
中学生・高校生が、成績のために読書感想文を書く作品。

いんや、15年生きたかどうかくらいの少年少女にこの苦さを味わうことができるものか!

ネットで読書感想文を調べていくつか読んでみたが、やはりこの青春の苦さを味わえるのは大学以降、想像でなく現実にこの主人公と自分を重ね合わせることができるようになってからが多いようだ。


中高でちょっとかじって「つまらない」という印象を植え付けてしまうより、大人になってから「読書の時間」みたいなものを会社かどこかで設けて、名作と呼ばれている作品を読む機会を与えられるのが一番いい。
義務教育期間しか文学を学ぶ機会がないのは惜しい。
理解力や想像力では補えない、経験でしか動かない歯車はある。

私の場合は一般教養を身に着けるために日本の名作に手を出した結果偶然得た三四郎、そして漱石氏との出会いだった。
私のような古風物好きな者でないと、中高で経験した読書の渋みにかぶれたまま人生が終わってしまうだろう。

 

社会人生活には文学を嗜み議論をする時間がないなんて悲しいことを言わずに、
ここに読書感想文を放り投げていこうと思う。